20歳の時、海外での盗難被害で思った事

海外旅行でヨーロッパに行った時のことです。
    
ホテルに泊って就寝していた私。
    
朝起きたら、パスポートとカメラなどを入れた貴重品入りのカバンだけがごっそりとなくなっていました。
    
カギをかけていたのに、寝ている間に部屋に忍び込まれて盗まれたようでした。
    
今思えば殺されなかっただけよかったとは思いますが、その時は貴重品がなくなって混乱していました。
    
ホテルの従業員も、「あんたの自己責任だろ」という態度が見え見えで、あてになりませんでした。
    
日本から来たツアーガイドも「大変なことになった」と言いながら、自分への責任問題しか考えていないようでした。
    
現地ガイドを手配しましたから、その人と一緒に対応するようにとだけ言いのこし、立ち去りました。
    
ものすごく心細い気持ちでいっぱいでした。

    
「結局世の中、何事も自己責任で片づけられるんだよね。運が悪かった、仕方ないわ。」と自分に言い聞かせながら、とにかく私は現地のガイドさんがやってくるのを待ちました。


しかしこの後、私は「人間も捨てたもんじゃないな」と思うことになるのです。
    
現地ガイドさんは、とても穏やかそうな顔をした初老の現地女性。
    
現地の大学で日本語を学んでいたため、日本語が話せるとのことでした。
    
警官も3人やってきました。
    
現地ガイドさんは、私の言葉を逐一警官に翻訳してくれ、3人の警官もびっしり報告書を書いてくれました。
    
その後現地ガイドさんは、警察署、写真屋さん、大使館などに私を連れて行ってくれました。
    

その道中で
    
「私の国でこんな犯罪が起きるなんて本当に情けなくて恥ずかしい、本当にごめんなさい、あなたの旅行を台無しにしてしまってごめんなさい」と
    
涙ぐみながらわたしに言いました。
    
彼女は何も悪いことをしていないのに。
    
「自己責任だから仕方ない」とか「運が悪かった」という言葉で片付けずに、 私の悲しい気持ちにも察してくれた彼女の心に触れて、パスポートが再発行された時には、むしろ私は「こんな素敵な人がいる国だから、また来たいな」と思っていました。

現地ガイドの彼女以外にも、いい人はたくさんいました。

大使館の方々は半日でパスポートを発行してくれたし、

落ち込んだ顔をしていた私に席を譲ってくれた男性もいました。

盗まれたカバンも幸運なことに見つかり、カメラ以外は戻ってきたのです。

警官のレポートが詳細だったおかげで、海外旅行保険から被った損失をかなりカバーできました。

彼らの優しさのおかげで残りの旅行を楽しむことができ、いまこうして過ごせているのだと思います。

    
いい人悪い人の基準って国籍じゃないんだよなと思う出来事でした。